同時通訳可能な国産AI開発、大阪万博で活用へ…機密性高い国際交渉でも使用想定
総務省
総務省所管の国立研究開発法人「情報通信研究機構(NICT)」(東京)が、自然な会話の流れで同時通訳が可能な国産AI(人工知能)を開発し、2025年大阪・関西万博で活用することがわかった。政府は30年頃までには、機密性の高い情報を扱う国際交渉での使用を想定している。
首脳会談などの同時通訳では、熟練の通訳者が話者の発言の途中から翻訳を始める。作業の負担は大きく、日本語と英語の同時通訳者は国内で数百人に限られる。
NICTのチームは同時通訳者の協力を得て、用意した膨大な文章データのうち、通訳者が翻訳を始めるタイミングをAIに学習させた。用語集などと組み合わせることで、日英中韓仏の5言語で双方向の同時通訳ができるAIを開発した。
AI翻訳は、米グーグルなども技術開発に注力するが、海外の技術を使えば会話情報の流出リスクもあり、経済安全保障上、国産AIの実用化が求められていた。
NICTは今年度中に15言語まで対応言語を増やし、来年の万博期間中に会場で開かれる講演やセミナーで活用。AIを搭載するシステム開発は「TOPPANホールディングス」(東京)のグループ会社が手がけ、同時通訳された内容は、会場内のスクリーンのほか、参加者のパソコンなどに文字で表示されるという。
裁判や救急医療の現場での実用化も目指しており、NICTの隅田英一郎フェローは「AIのサポートがあれば、通訳者の負担は大幅に減らせる。人とAIが共存した高度な同時通訳を実現したい」と話している。