半導体の国内生産目指すラピダス、米新興企業とAI向けで協業…北海道の新工場で製造受託
(写真:読売新聞)
最先端半導体の国内生産を目指すラピダスは27日、AI(人工知能)向け半導体の設計・開発を手がける米新興企業のテンストレントとAI向け半導体の製造で協業すると発表した。北海道千歳市に建設中の新工場で受託製造する。ラピダスが最先端半導体の顧客獲得を公表するのは初めてとなる。(橋谷信吾)
「今後はあらゆる製品にAIが使われる。競争するには、顧客の要望に合わせたAI向け半導体を迅速に作ることが大事だ」
ラピダスの小池淳義社長は27日の記者会見で、協業の意義を強調した。
テンストレントは2016年の設立。業界で「天才エンジニア」として知られるジム・ケラー最高経営責任者(CEO)が率いる。
両社は昨年11月、AI向け半導体の共同開発で提携すると発表していた。今回は、さらに受託製造まで踏み込んだ内容となる。
ラピダスは25年に新工場の試作ラインを稼働させ、27年をめどに量産を始める計画だ。一方、テンストレントは消費電力が少ないAI向け半導体の設計で強みを持つ。今回開発するAI向け半導体は、データをサーバーに送らず端末側で計算する。自動車や産業用ロボットでの活用が期待される。
新工場では最終的に5兆円規模の投資が必要とされており、政府は3000億円超の支援を決めた。今回の協業は、課題となっていた顧客獲得に向けて重要な一歩となりそうだ。
膨大な量の情報を処理するAIでは、高性能で消費電力が少ない半導体が欠かせない。小池社長は「AIを使う上で、消費電力をいかに抑えるかが重要だ」と指摘した。
ラピダスは、まだ技術が確立されていない2ナノ・メートル(ナノは10億分の1)世代の半導体の生産を目指している。テンストレントと設計から製造まで協力することで、開発加速や製造の効率化といった相乗効果が見込めると判断した。ケラー氏も「日本で優位なビジネスを構築する機会を得られると考えた」と語った。
AI向け半導体では、米エヌビディアが手がける画像処理半導体(GPU)が好調だ。高性能コンピューターやデータセンター向けで需要が高まっており、同社の世界シェア(占有率)は8割に上るとされる。
一方、GPUは消費電力の多さが弱点とされる。自動車やスマートフォンなどで使うAI向け半導体では今後、競争が激しくなるとみられている。政府は今回のAI向け半導体の協業などに最大280億円を投じ、開発を加速させる方針だ。