北京モーターショー、苦戦の日本EV…マツダ社長「新興メーカーが価格破壊」
ホンダが発売した「e:NP2」(25日、北京で)=大原一郎撮影
【北京=山下福太郎】中国で開催中の世界最大級の自動車展「北京モーターショー」で、出展企業が値下げや割安感を前面に出している。電気自動車(EV)を中心とした過剰生産や不動産不況を背景とした激しい価格競争に、日系メーカーは苦慮している。
■3万元値下げ
ホンダは開幕日の25日、中国で新型EV「e:NP2」を発売した。合弁会社の幹部が会場で、「価格は18・98万元(約410万円)」と発表した後、さらに当面は3万元値下げすると明かすと、数百人の観衆から歓声が起こった。新車の発売と同時の値下げは中国でも珍しい。
2年前に投入した前モデルに比べ航続距離を7%伸ばし、IT装備も充実させた上での値下げについて、関係者は、「相当に苦しい価格設定だが、まずは値下げして客の関心を引くしかない」と説明する。
EV市場に新規参入したスマートフォン大手・小米科技(シャオミ)の雷軍会長は25日、「私たちのEVは7・5万台を超えた」と胸を張った。小米が3月末に初めて発売したEV「SU7」は21・59万元(約470万円)。「売るほど赤字」と言われるが、当面は採算を度外視してシェア拡大を優先する方針とみられる。米テスラや中国EVの最大手BYDも、対抗する形で追加値下げに踏み切った。
■補助金打ち切り
コロナ禍の中止を挟み2020年以来の開催となった今年、EVなど新エネルギー車の展示は278台と、4年前の160台から7割も増えた。だが中国メディアによると、中国のEV市場は「低価格戦争」の状態にある。今年1~3月期の値下げ額の規模は、すでに22年通年の値下げ額に達したという。
背景には、生産と販売のバランス悪化がある。中国の昨年の自動車生産は前年比11・6%増の3016万台に達した。
その反面、不動産不況は長期化し、政府による新エネ車への補助金も22年末で打ち切られた。中国国内の自動車需要は、17年の2912万台をピークに、23年は2598万台にとどまった。作りすぎた自動車は、大幅な値引きなしでは売れにくい状況だ。
中国の23年の輸出台数は491万台と日本を抜いて世界一になったが、国内で余ったクルマを、海外に回している構図と言える。
■電動化出遅れ
日系各社は、コロナ禍の3年間に中国で急加速したクルマの電動化やIT化に出遅れた。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車は、23年の中国販売台数が1・7~16・1%減の前年割れだった。各社はEVなど新エネ車のラインアップを増やしたり、テンセントや百度(バイドゥ)などIT大手と提携したりと、遅れを取り戻すのに必死だ。
マツダの毛籠勝弘社長は会場で、「多くの新興メーカーの参入が価格破壊を起こした。中期的には、持続可能な価格水準に収斂(しゅうれん)するだろう」と述べ、値下げ競争には慎重な姿勢を示した。