井上尚弥、1回にダウンの劣勢からKO防衛 「いいキャリア築けた」 次戦は9月で交渉中
6回、井上尚弥(右)がネリからダウンを奪う=東京ドーム(中井誠撮影)
ボクシングの世界戦4試合が6日、東京ドームで行われ、スーパーバンタム級4団体タイトルマッチで統一王者の井上尚弥(大橋)は元世界王者のルイス・ネリ(メキシコ)を6回1分22秒TKOで下し、4団体の王座を防衛した。世界戦は通算22勝目で、歴代1位の井岡一翔(志成)に並んだ。
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4万3千人が詰めかけた東京ドームがどよめいた。4本のベルトをひっさげ、花火の中を入場した井上尚が1回、ネリの左フックをまともにくらい、プロ初のダウンを喫した。「ダメージはさほどなかった。パンチの軌道がちょっと読めなかった」。だが「モンスター」が本領を発揮したのはその後だった。
2回、再び当てにきたネリの左フックをかわすと、強烈な左カウンターを浴びせ、ダウンに追い込んだ。「1回のダウンをチャラにできた」。4団体統一王者は攻勢を緩めず、鋭いジャブで相手の顔を真っ赤に腫れさせ、5回に左で2度目のダウンを奪った。6回には右で三たびネリをリングに沈め、貫禄のKO防衛を果たした。
東京ドームでボクシングの世界戦が開かれるのは34年ぶり。大観衆が集う光景に、百戦錬磨の井上尚も冷静ではいられなかったという。「舞い上がってはいないんですけど、ちょっと浮足立つ感じだったのかな」。相手は2018年に山中慎介との世界戦で制限体重を超過し、王座を剝奪された過去を持つ〝悪童〟。多くのボクシングファンから「敵討ち」を期待される重圧も大きかった。落ち着いて劣勢を立て直し、「自分の中でいいキャリアを築けた」と前向きにとらえた。
次戦はこの日来場した2団体でスーパーバンタム級1位のサム・グッドマン(オーストラリア)と9月開催で交渉中。「しっかり調整したい」と意気込んだ。(奥村信哉)