リチウムイオン電池をハンマーでたたくと、すぐに高さ1mの火花…「シュー」と音を立て燃え始めた
ハンマーでリチウムイオン電池を傷つける消防隊員=和歌山市消防局提供
リチウムイオン電池による火災に注意を――。和歌山市消防局がこんな呼びかけをしている。スマートフォンやゲーム機に内蔵されたリチウムイオン電池の劣化などを原因とするケースが2023年、前年の3倍以上に増加。衝撃を与えたり、純正品以外の充電器を使用したりすると危険性が高まるといい、市消防局は「異常な熱や臭いを感じたら、すぐに使用をやめてほしい」としている。(大家広之)
リチウムイオン電池が変形するとどうなるのかを調べる実験を市消防局は行った。電池に穴を開けたり、ハンマーでたたいたりすると、すぐに約1メートルの高さまで火花が散り、「シュー」という音を立てて、燃え始めるという。
リチウムイオン電池は、ノートパソコンや電動工具、コードレス掃除機など充電式の家電で使われている。ただし、劣化や外圧で意図しない化学反応が起こるほか、極端に大きな電気が流れる恐れがあるという。小橋一成・予防調査班長は「日常にありふれた便利なものだが、使い方を誤れば、誰もが火災に巻き込まれる危険がある」と強調する。
市消防局によると、出火原因の上位は例年、「コンロの消し忘れ」や「たばこの不始末」などだが、23年に市内で発生した91件の火災のうち「電気機器」が15件を占め、最多となった。統計が残る1950年以来初めてだという。電気機器のうち、リチウムイオン電池関連が7件を占め、前年の3・5倍となった。
出火原因で2番目に多かったのは「たばこ」(14件)、3番目は「たき火」(10件)だった。建物の焼損は前年より10棟増えて91棟(全焼15棟、半焼9棟)で、死者は8人に上った。
市消防局がリチウムイオン電池が原因となった火災を詳しく調べたところ、罹災(りさい)した住民は「充電に時間がかかっていたけれど、無理して使用を続けた」「メーカー指定以外の充電器を使っていた」などと話したという。火災につながる危険性をあまり認識せずに被害に遭うケースが多いとみられる。
電池を分別せずに一般ごみとして出し、収集車や集積所が火災となる事例も後を絶たない。作業中に電池が圧縮されると爆発することもある。市消防局は、家電量販店やホームセンターなどの回収ボックスへの廃棄を求めている。担当者は「電気機器を一度点検し、不具合があれば、早めにメーカーなどに相談してほしい」と話している。