ウクライナのプロペラ機、後部座席から銃でドローン撃ち落とす 第一次大戦さながら
それから1世紀あまりの時が経過したが、機上偵察員はいまだにプロペラ機の後部座席から小銃を撃っている。先週、ウクライナ志願兵の飛行隊に所属するヤコブレフYak-52練習機の射撃手が、ウクライナ南部オデーサの上空でロシア軍のオルラン10無人偵察機と交戦し、およそ10万ドル(約1600万円)のこのドローンを撃ち落としたもようだ。
ロシアによるウクライナに対する全面戦争において、第一次大戦で用いられた戦術や技術が復活するのは初めてではない。塹壕戦が繰り広げられているし、19世紀末に開発されたマキシム機関銃に由来する往時の銃が引っ張り出されている。最近話題の「亀戦車」の先祖も、第一次大戦期に見いだすことができる。しかし、機上の射撃手とドローンの空中戦というのは、過酷な戦争が続く現代のウクライナに出現した第一次大戦さながらの光景として、最も劇的な事例かもしれない。
オルラン10が撃ち落とされたとみられる様子は、地上からとタンデム複座のYak-52の内部からそれぞれ撮影された動画に映っている。映像では、1970年代に開発された重量1.5tのYak-52(巡航速度は時速160km強程度)が、重量15kgほどのオルラン10の周囲を旋回する。銃声が聞こえる。オルラン10は損傷したらしく、自動で展開したパラシュートに吊られながら下降していく。
低速飛行するドローンを、低速飛行する航空機から射撃手に迎撃させる。これはたしかに、速度の遅いドローンに低コストで対処する方策としてひとつの選択肢になる。
実際、現代のドローンが撃墜された最初期の事例のひとつも、まさにこの方法によるものだった。1990年代前半のコソボでのことだ。「セルビアの斬新な対UAV(無人機)戦術のひとつは、軍用のMi-8「ヒップ」ヘリコプターを(米陸軍のRQ-5)ハンターUAVの近くまで飛行させ、ドアから射撃手に7.62ミリ機関銃で撃ち落とさせる、というものだった」と、2000年の論文でJD・R・ディクソン米海軍少佐(階級は当時)は紹介している。
最近では、紅海上空でイエメンの反政府組織フーシ派のドローンをフランス軍のヘリコプター搭乗員が撃ち落としている。
ドローンをヘリコプターやその他の航空機の後部からの機銃掃射で迎撃すれば、貴重な防空ミサイルを節約できる。米陸軍士官学校の研究機関である陸軍サイバー研究所(ACI)のポール・マクスウェル副所長は「安価なUAVを排除するために、1発(数百万ドルとは言わずとも)数十万ドルはするミサイルを費やすのは経済的に割に合わない」と指摘している。
全面戦争が3年目に入るなか、最も優れた防空ミサイルを節約することは現在のウクライナにとってとりわけ重要になっている。ウクライナは依然としてミサイルの大半を西側の支援国から得ており、米国からの支援がロシアに都合のよい共和党議員グループの妨害で半年にわたり滞った結果、ミサイルの在庫は絶望的なまでに少なくなっているからだ。
とはいえ、低コストの対ドローン戦術は容易とは限らない。第一次大戦中の最初期の空中戦ですらそうだった。英陸軍航空隊の機上偵察員だったアーチボルド・ジェームズはこう回想している。「わたしたちは同じくらいの高度を飛んでいるドイツの航空機と遭遇しました。ですが、速度も同じくらいでしたので、600ヤード(約550メートル)以上は近づけませんでした」
「わたしは軍用ライフル銃の照準を600ヤードに合わせ、間隔を置いて6発撃ちました。ひどいもので、敵機には一発も命中しなかったようでした」とジェームズは続けている。「間違いなく距離が離れすぎていたのですが、当時はどのくらい近づいて撃てば有効なのか、見当がついていませんでした」
つまり航空機の後部からドローンを撃ち落とすには、パイロットが自機をかなり近くまで寄せ、射撃手は入念に照準を合わせて撃つ必要があるということだ。
(forbes.com 原文)