アングラ演劇の寵児、唐十郎さん死去…社会の矛盾や弱者の悲哀を浮かび上がらせ時代を刺激
状況劇場の紅テントと劇団員。中央が唐十郎さん(1968年、東京・新宿の花園神社境内で。井出情児氏撮影)
仮設劇場の紅(あか)テントで全国各地に「遠征と襲来」を繰り返したアングラ演劇の寵児(ちょうじ)、唐十郎さんが4日、84歳で死去した。異能の演劇人はその多才ぶりで時代を刺激し続けた。
1960年代から主宰した「状況劇場」ではテント公演を新宿の公園で強行して逮捕されたり、日本列島南下興行と銘打って復帰前の沖縄まで巡演したりと型破りな行動で注目された。寺山修司さんら同時代の演劇人が欧米を目指す中、戒厳令下の韓国、中東の難民キャンプなどで公演した。
戯曲に登場するのは、日の当たる世界では生きられない男女ばかり。戦争が残した傷や社会の矛盾、弱者の悲哀を浮かび上がらせた。
「状況劇場」からは麿赤児さん、最初の妻の李麗仙さん、小林薫さん、根津甚八さんら個性的な俳優を輩出したが88年に解散。翌年に若手を集めて劇団唐組を旗揚げした。また、97年に横浜国立大教授に就任、指導したゼミの学生たちが劇団「唐ゼミ☆」を作った。
また60年代後半、当時編集者だった村松友●さんの勧めで小説を書き始め、78年に「海星・河童」で泉鏡花文学賞、パリで日本人留学生が人肉を食べた事件を題材にした「佐川君からの手紙」で83年に芥川賞を受賞した。俳優として映画やテレビドラマでも活躍。大鶴義丹さん、美仁音さん、佐助さんら子供たちも俳優として活躍している。(●は「示」の右に「見」)