よみがえるベトナム反戦運動の幽霊、大統領選でバイデン氏に不吉な兆候 ガザ反戦デモ
米国で名門コロンビア大学をはじめ、各地の大学でイスラエルによるパレスチナデモ自治区ガザでの攻撃に対する抗議デモの嵐が吹き荒れている。1968年、大統領選で民主党敗北につながったベトナム反戦運動に重なるとの論調も出始め、バイデン米大統領には不吉な兆候だ。
「幽霊が戻ってきた」「民主党政権は気をつけろ」。ニューヨーク・タイムズ紙やCNNテレビなど全米メディアは今、「あの時」との比較でかまびすしい。
「あの時」とは68年夏、シカゴで行われた民主党大会のことだ。現職だったジョンソン大統領の後継候補を指名する晴れ舞台となるはずだった。それがベトナム反戦活動家の乱入で、警察との激しい衝突に発展した。反戦運動は大学から広がった。
共和党候補だったニクソン氏は「秩序回復」と戦争からの「名誉ある撤退」を公約。本選挙で、民主党のハンフリー候補に勝利した。
トランプ米前大統領も「68年の教訓」を意識しているように見える。
FOXニュースで「この国では、法と秩序を尊重せねばならない。米国はもはや世界で尊敬されていない」と述べ、バイデン政権を攻撃した。
現在、世論調査では若者の多数が民主党を支持しており、バイデン氏は騒ぎが収束するのを待っている。だが、ニューヨーク・タイムズ紙は「これは無謀な賭け」だと警告した。社会の混乱が広がり、民主党政権への不信が高まれば、共和党のトランプ氏に追い風が吹く。「68年の再現」になりかねない。
コロンビア大ではデモ隊の一部が、「ハミルトンホール」と呼ばれる構内の建物を占拠し、椅子や机を重ねてバリケードを張った。警察は窓から突入し、強制排除した。この建物は68年4月末、ベトナム反戦活動家と警察が衝突し約700人が拘束された場所で、党大会の混乱への序章になった。(三井美奈)