だいこん1本から宝飾品まで… 売り上げは半年で1億円、20代の女性外商が奮闘
若手女性外商員として活躍する吉岡沙希さん(左)=2月上旬、大阪市天王寺区
外商顧客を構成する層が多様化する中、女性の外商員の需要も高まってきている。近鉄百貨店の吉岡沙希外商第二係長(29)は業界でもめずらしい女性の若手外商員。「日々のお客さまの反応がやりがい」と語り、売上高は半年で1億円に達することも。40~50代の男性ベテラン社員が多い現場で顧客の心をつかむために奔走している。
吉岡さんは平成29年に入社し、家庭向け外商員として勤務。取り扱う商品は何百万円もする宝飾品や絵画、調度品から数百円の野菜など多岐にわたる。「関係を築いた顧客からは百貨店での食材の買い物を頼まれるときもあり、だいこんを持って行ったりする」と笑う。
近鉄百によると、同社の外商顧客は約14万人。うち、「上位顧客」と呼ばれる8%の大口の顧客が外商売上高の約6割を占めている。百貨店の〝トップ層〟を相手にする外商員は顧客の性格や好み、専門知識など覚えることは膨大なうえ、購買意欲を刺激するような提案力も求められており、伝統的にベテラン社員が担当することが多い。
1人で500件近く担当している吉岡さんは1日3軒以上をまわる多忙なスケジュールでも顧客情報を正確に把握。「深く会話をしたら印象に残る。分からないことは素直に聞くことも大事」と話す。
「接客に正解はないと感じている」。一度に数百万円単位で購入する顧客の心を動かすには、日々の信頼関係の構築が重要となる。若い世代や女性の顧客を相手にすることも多いという吉岡さん。年代が近いという立場から出てくる提案もあるといい、「(顧客は)正直な感想を求めている。売りたいがためにすべて褒めるのではなく、はっきりとした意見を言うことも大切だ」と話す。
外商員の仕事について語る吉岡沙希さん
近鉄百では、外商の売り上げが好調に推移しており、令和5年度は対前年比で6・5%増加した。今後も成長領域であることから同社は取り組みを強化しており、担当者は「若年富裕層に浸透できるように若い知見を取り入れたい」としている。(清水更沙)