【未来予測・2050年】AIやロボット技術の加速度的進化で“10人必要だった人手が1人で充分”な社会に スマホの普及以上のインパクト
AIやロボットが活躍する四半世紀後の風景とは(写真:イメージマート)
21世紀を迎えて四半世紀が過ぎようとしている。次の四半世紀が過ぎた2050年は一体どんな社会となっているのだろうか。子や孫の世代は希望を持って生きられているのか、専門家による知見のもと、予想する。
【未来年表】医療やロボット技術が飛躍的に進化 2050年までに起きそうなこと
《2050年4月25日現在、あなたの寿命は95才と6か月。今日中に1km走れば、95才と9か月に延びます》
休日の朝、公園にいる30代の男性は、腕につけた端末に映し出された文言を見て軽くうなずき、ランニングシューズで走り出した。
その傍らで、90代の女性は車いすを押す金属の腕に自らの手を重ね、「今日もありがとう」と微笑みかける。
彼らの上空には荷物配達のドローンが飛び回り、道路を行き交うバスは自動運転。乗客の女性は、隣に座った友人に「昨日、AIにスキンケア頼むの忘れちゃった」とため息をつきながら話しかける──。
「2050年には『ソサエティ5.0』と呼ばれる、ロボットやAIなどが主力になる時代がやって来ます」
そう話すのはITジャーナリストの三上洋さん。ソサエティ5.0とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く「5番目の新たな社会」のこと。
スマートフォンすらなかった四半世紀前に比べると、2024年現在でも充分にハイテク社会だが、ここからさらにテクノロジーは飛躍的に進化していく見通しだ。
「家事や仕事に伴う膨大な作業の大部分を、あらゆるデータや経験を持ち合わせたAIが判断・処理をして、ロボットが実行する世の中がやって来ます。つまり現在、私たちが五感で受け止め、脳で処理して体で実行していることの大部分をロボットとAIが請け負ってくれるようになる。
この四半世紀で最も大きかった社会変化はスマホの普及で、人々の行動様式が一変しましたが、AIの浸透はそれ以上のインパクトがあるはずです。
AIの知能が加速度的に上がり、それに並行してロボット技術も進化すれば、10人必要だった人手が1人で充分になる。社会の多くの分野が変化を迫られるでしょう」(三上さん)
具体化されつつある四半世紀後の風景
最先端の現場では、AIやロボットが活躍する四半世紀後の風景が具体的に描き出されつつある。
「ぼくの目標は、2044年までに『ドラえもんをつくるプロジェクト』を完了させることです」
そう話すのは日本大学文理学部准教授で、『じぶんの話をしよう。成功を引き寄せる自己紹介の教科書』(PHP研究所)を上梓するAI研究者の大澤正彦さんだ。
「このプロジェクトがスタートしたのはちょうど10年前の2014年。人の心に寄り添い、相互作用するAIの分野である『HAI(ヒューマンエージェントインタラクション)』の技術を使い、研究を進めています」
現在、大澤さんが開発中のAIは「ド」と「ラ」だけで相手とコミュニケーションを取る小さなロボット。
「人工知能であるChatGPTのように流暢にしゃべり、言語ベースでコミュニケーションを取るのではなく、まだ言葉を覚えていない小さな子供のように感情の赴くままに相手と仲よくなろうとするロボットです。開発や研究とともに、2050年の未来を担う子供たちと月に1回、『ドラえもんを本気でつくる子ども会』を開いています」
心強い“相棒”の誕生を心待ちにしたいが、AIとロボットの知能と技術の融合は四半世紀後の日常と、どうリンクするのだろうか。三上さんが解説する。
「すでにファミリーレストランなどで稼働している『配膳ロボット』が原型になり、進化していくことが予測されます。配膳ロボットはAIが店内のマップを把握し、ロボットがお客さんのいる場所に正確に配膳する。あれこそがAIとロボットの理想的な融合の形です。
同様の融合パターンは実用化を目指して実験が続く自動運転やドローン配送にも当てはめることができる。2050年には両方とも実現するでしょう。無人のバスで通勤し、配達物は空からドローンが手元まで届けてくれるようになる未来がやって来るはずです」
※女性セブン2024年5月9・16日号