「金利ある世界」に備え…金融業界で人材獲得競争激化 大和証券はIT人材を増員
「金利ある世界」に備え…金融業界で人材獲得競争激化 大和証券はIT人材を増員
日本銀行が3月にマイナス金利政策を解除し、今後の「金利ある世界」を見据えた組織改編や人材獲得競争が金融業界で盛んになっている。大和証券は大量の情報(ビッグデータ)を活用するデータサイエンティストを補強。新たな局面を顧客開拓に繋げようと、信託銀行や生命保険でも同様の動きは広がっている。
「金利ある世界は(企業などの)資金調達や運用で非常に大きなビジネスチャンス」。大和証券の山本聡グローバル・マーケッツ戦略企画部長は意気込みをみせる。
同社では市場環境を変化を視野に、株式や債券の運用などを一括で全社横断的に陣頭指揮をとる部署として、グローバル・マーケッツ戦略企画部を令和5年4月に新設。1人だったデータサイエンティストを6年4月からは5人に増員。データを最大限活用して、顧客の多様なニーズにこたえる体制を構築する。
平成30年4月から導入している金利上昇を見据えた研修プログラムの受講者も約90人に達し、全国の本支店で顧客対応にあたる。山本氏は「人材は急いて育てても対応できない」とあらかじめ準備してきた利点を強調する。
明治安田生命保険は国内金利の上昇やそれに対応した顧客の資産形成のニーズに対応するため、貯蓄性の高い金融商品の開発や販売戦略を検討する全社横断的なプロジェクトチームを4月に新設。「必要なアイデアやノウハウを全社から持ち寄り、今後想定される利上げに備える」としている。
三菱UFJ信託銀行は過去の金利上昇局面で円の金利運用や資金調達の実務経験者のリストアップを進めてきた。すでに3人を実際に担当部署に配置したという。
金利上昇局面での資金繰りや資産運用経験者の人材確保と育成は、業界共通の課題だ。今後想定される追加利上げに向けて、各社は対応を急ぐ考えだ。(永田岳彦)