「覆面介入」5兆円規模で実施か 日銀データから推計、円相場急変の4月29日
29日午後、記者団の取材に応じる財務省の神田真人財務官=東京都千代田区
政府・日本銀行が4月29日に5兆円規模の円買いドル売りの為替介入に踏み切った可能性があることが30日、日銀が公表したデータで判明した。令和4年9~10月の総額約9・2兆円に上る円買い介入以来の実施となる。当局は今回の為替介入の有無を明言しておらず、「覆面介入」の形をとった。
日銀がこの日公表した5月1日の「当座預金増減要因」の予想値と、市場推計値に大きなずれがあり、介入を実施した可能性が濃厚となった。円買い介入した場合、日銀はその2営業日後に市場から吸収した円資金を当座預金から外国為替資金特別会計に繰り入れるため、数値が変動する。
東短リサーチでは「4月29日に5兆円前後の円買い介入が実施されたと推測される」と分析している。正式な介入の実績は5月末に財務省が示すデータで明らかになる。
介入後も円安基調に変化は見られない。30日午後5時時点の円相場は前週末比15銭円安ドル高の1ドル=156円85~87銭。日銀が当面は緩和的な金融環境を保つ方針であるのに対し、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げ観測が遠のく。日米の金利差が開いた状態が長引くとの見方から円を売って、金利が高く運用に有利なドルを買う動きが強まっている。
財務省の神田真人財務官は30日、記者団の取材に応じ、「過度な変動が投機によって発生してしまうと国民生活に悪影響を与える」と述べ、市場を牽制(けんせい)した。