「絶対に逃れられない」…遺品整理業者が「一人でやる方がむしろ楽」と語る、いま遺品整理の現場で起きている意外過ぎる「現実」
ご両親が亡くなったら、実家をどうするかお考えだろうか。実家に戻って暮らすのか、それとも実家を処分するのか。いずれにしても遺品整理が必要だが、想像以上の困難が待ち受けている。いわゆる「親家片」本には、「こうして片づけた」「こうすれば片づけられる」などと成功例が書かれているが、現実はそんな生やさしいものではない。『遺品は語る』(赤澤健一著)から一部抜粋して、注意するべきポイントをお届けする。
『遺品は語る』連載第14回
『「遺品の片づけは心の片づけ」…不仲のすえ孤独死した父の遺品整理で、「思い出した」父との絆』より続く
死に方は生き方
故人の家を整理していて感じるのは、「どう生きるのがいいのか、との思いの積み重ねの先に、亡くなり方は存在する」という事実だ。
というのも、私たちは故人のことを知らないのだが、知らないがゆえになおさら、人気がない現場で故人の「生き方」をビビッドに感じるからだ。遺品整理の現場には、故人が生きていたときの「生きる形」が、そのまま残される。
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片づけブームなどというが、「どう片づけるか」の方法論のみが注目されすぎてはいないだろうか。遺品整理業者が申し上げるのは口幅ったいところがあるが、むしろ、「どう生きるか」に思いを向けることのほうが大切だと思う。要は、生き方の問題だ。片づけだけを論じても始まらないのだ。
けっして他人事ではない
特に、親が片づけられなかったりすると、片づけるように子どもが忠告したとしても、なかなか聞き入れてもらえないものだ。人は、高齢になると片づけることが難しくなる。そこを突ついて自尊心に触れると、かえってゴミの山を捨てなくなったりする。
遺品整理の現場がどうなるかも、本人がどう生きたいと思うかにかかっていると私は思う。
そもそも、亡くなった親の遺品整理がスムーズにできている人は少ない。しかしなぜ、遺品整理が多くの人にとって難しい問題になるのだろうか。
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たとえば孤独死などというと、たいていの人の感覚では「マスコミ報道の世界の出来事」と思ってしまいがちだ。しかし、読者の方がたとえば50~60代で、親と同居していない子ども世代に当たるようなら、これはけっして他人事ではない。
統計で明らかなように、両親と離れて住んでいる人は少なくない。親がご高齢であれば、いつ通いで介護が必要になっても不思議ではない。さらには、孤独死の問題に直面してもおかしくない。
別居しているとさらに困難に
両親が亡くなった場合、遺品整理はほとんど子どもがやるものだが、現実には身の回りを片づけて亡くなられる方は少なく、大量の遺品が遺されることになる。それを整理するのはたいへんな作業になる。
仮に突然、ご両親のどちらかが亡くなった場合、経験がない中で、葬儀や各種手続きのために遺品整理を短時間でしなければならないことになる。残された片親がいる場合、その片親が実家に住み続けるのであれば、そのために家を片づける必要もある。
どちらかの親を先に亡くし、次に、一人住まいをしてきた親を亡くされたような場合は、先に見送った親のときの体験を生かせる。しかも両親を亡くされた後は、子どもの都合だけで遺品整理ができることになるから、むしろやりやすい面もあるかもしれない。
それまで両親と同居していた場合でも、万一の際の遺品整理は難儀するのだから、親と別居していた場合ともなれば、実家の内部の状況を熟知していないだけに遺品整理はさらに困難なものとなる。
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相続の問題もある。親の遺した財産を探し出して早急に遺産額を確定させなければ、相続手続きが進められないという問題がある。
こうしたさまざまな難問が、特に親と別居している子ども世代に重くのしかかってくるのは「すぐそこ」まで迫っているのだ。
ここからは遺品整理の大変さについて、一つ一つ具体的に見ていこう。『「遺品整理は生前から始めないとマズい」…遺品整理を早めにするべき「本当の意味」と「片づけ本」の意外な落とし穴」』へ続く。