「堂々巡り」で早期改憲に暗雲 自民が起草委設置要求も立民折れず
自由討議が行われた衆院憲法審査会。左から3人目は森英介会長=9日午前、国会(春名中撮影)
与野党は9日の衆院憲法審査会で、緊急時に国会議員の任期延長を可能にする改憲などについて議論した。自民党は重ねて改憲原案を協議する起草委員会の設置を呼びかけたが、党内や支持層に護憲派を抱える立憲民主党を説得するには至らず、「堂々巡り」の印象を残した。護憲勢力が比較的多い参院憲法審では衆院以上に議論が停滞しており、岸田文雄首相や自民が目指す早期の改憲には暗雲が漂ったままだ。
自民や公明党、日本維新の会、国民民主党は緊急事態下で国会機能を維持する観点から議員任期延長が必要との立場だ。しかし、4月末の衆院3補欠選挙を制して勢いに乗る野党第一党の壁はなお高い。
野党筆頭幹事の逢坂誠二氏(立民)は「災害に強い選挙のあり方を十分に検討する必要がある。安易に議員任期の延長を行うのは順序が逆だ」と主張。本庄知史氏(同)も「『もしかしてあるかもしれない極めて小さな可能性』に殊更に焦点を当てている」と議員任期延長論を批判した。
「大型連休後に事態は動く」(自民関係者)との期待もむなしく、起草委設置も見通せていない。
「多くの会派から早急に条文起草作業に入るべきだとの意見がある。反対の立場の方も議論に加わって意見を述べていただきたい」
与党筆頭幹事の中谷元氏(自民)は憲法審の冒頭、立民に起草委設置に応じるよう訴えた。他の改憲政党も賛同。玉木雄一郎氏(国民民主)は「来週からは全会派を入れた起草委を設置し、条文案作りに着手することを求めたい」と念を押した。
憲法審終了後、中谷氏は記者団に「(立民から)返事があったら設置する」と説明した。しかし、逢坂氏は記者団に起草委設置については正式に提案されていないとの認識を示した。
参院憲法審が足踏みを続ける中、自民重鎮は「衆院が改憲の流れを作るしかない。そのためには起草委を早く立ち上げる必要がある」と語るが、時間だけがいたずらに過ぎているのが現状だ。(末崎慎太郎、内藤慎二)