「力や威圧ではない信頼に基づく経済関係を」…岸田首相が中南米政策でスピーチ
岸田首相
【サンパウロ=阿部雄太】岸田首相は4日午後(日本時間5日未明)、ブラジル・サンパウロで中南米政策をテーマにスピーチを行った。中国を念頭に対等な立場での経済協力の重要性を訴え、日本企業の活動を後押しする方針を示し、今後3年間で1000人規模の交流事業の実施を表明した。
日本の首相が中南米政策でスピーチするのは安倍元首相以来10年ぶりで、首相は「力や威圧ではない、信頼に基づく経済関係こそが公正な豊かさにつながる」と訴えた。中国と中南米の接近に歯止めをかける狙いもあり、「経済的威圧などは到底受け入れられない」とも表明した。「中南米はかけがえのないパートナーとなる」として、課題解決に向けた連携も訴えた。
中国は近年、豊富な資金力を背景に巨大経済圏構想「一帯一路」を中南米にも拡大し、インフラ(社会資本)整備を加速させている。日本政府は不透明な開発金融への警戒感を強めており、首相は「(借金漬けにして権益を取り上げる)債務の罠(わな)」の問題も提起した。港湾の運営権を事実上、中国に譲渡したスリランカのケースなどを踏まえたもので「日本は持続可能な経済協力を推進していく」と強調した。
首相は「この10年で中南米に進出する日本企業の拠点数は1000以上増加した」と紹介し、新産業や雇用の創出を目指す姿勢もアピールした。交流事業を通して中南米の若者にも訪日を呼びかけた。アマゾンの森林を守る取り組みに参加する考えなども説明した。