「休戦合意に関わらずラファ攻撃」イスラエルのネタニヤフ首相 ブリンケン米国務長官と1日に会談 政権内対立深刻化
【カイロ=佐藤貴生】イスラエルのネタニヤフ首相は4月30日、パレスチナ自治区ガザで続くイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘について、「全ての目標を達成する前にやめるのは論外だ」とし、休戦合意の有無に関わらずガザ最南部ラファで地上作戦を行い、ハマスを壊滅すると述べた。100万人以上が密集するラファを本格攻撃すれば、イスラエルの国際的孤立が一層深まることは確実だ。
中東歴訪中のブリンケン米国務長官は30日夜、ヨルダンからイスラエルに到着した。ネタニヤフ氏や政府高官と5月1日に会談して対応を協議する。
ブリンケン氏は、民間人の避難計画が示されていないとして、ラファ攻撃に反対する姿勢を示している。一連の会談でガザへの支援物資の搬入増加をイスラエルに求める意向も示した。
ロイター通信によると、ハマスは先週末にイスラエルの新たな休戦案を受け取った。米英両国は「寛大」な案だとしてハマスに受諾を迫った。
ハマスの代表団は4月29日、協議を仲介するエジプトを訪れたが、書面で回答を持って戻ってくるとしてエジプトを離れた。ネタニヤフ氏の発言がハマスの判断に影響を与えるとの見方もある。
一方、ネタニヤフ政権では今後の方針を巡る対立が深刻化している。
連立与党を構成する極右政党のベングビール国家治安相は「無責任な取引=政府の解散」とX(旧ツイッター)に投稿し、戦闘を継続しなければ連立を離脱すると示唆。これに対し、ハマスの奇襲を受けて発足した戦時内閣に加わる中道右派野党の代表、ガンツ前国防相はラファ攻撃より人質解放を優先すべきだと強調し、休戦合意の締結を求めた。
イスラエルの各種世論調査では、奇襲を許したネタニヤフ氏の支持率は低下しており、政権が倒れて選挙が行われれば下野を余儀なくされるとの見方が有力。政権を維持したいネタニヤフ氏は板挟みに陥っている。