「レクサス初めて」の人にオススメしたい…LBXは小さな高級車だ【試乗記】
レクサスLBX Relax(FF)/価格:THS 460万円(AWDは26万円高)。LBXはCool(クール)/Relax(リラックス)の2種のデザインラインと、自由に内外装がコーディネートできるBespokeBuild(ビスポーク・ビルド)を設定 Photo by Hiroya Yamagami
“小さな高級車”への挑戦
プレミアムだけどカジュアルな斬新SUV
週末に買い物に出掛けるのにふさわしいレクサスとは?いまやすっかりSUVが得意というイメージのあるレクサスには、LXを頂点に、RX、NX、UXというラインアップが揃う。そこにエントリーモデルとして加わるLBXは、“エッセンシャルラグジュアリー”をキーワードにした、プレミアムだけどカジュアルな斬新SUV。サイズのヒエラルキーを超えた新たな価値を創造することに挑んだ意欲作である。
開発コンセプトは、L=レクサス、B=ブレークスルー、X=クロスオーバーの車名のとおり、あらゆることをブレークスルーし、「本物を知る人が素の自分に戻って気負いなく乗れるコンパクトラグジュアリー」だ。
LBXは、多くのメーカーが挑戦し、いまだに最適解が定まっていない“小さな高級車”である。どういうクルマにするのか、開発陣は非常に頭を悩ませたという。試行錯誤を重ねて生まれたLBXは、レクサスSUVのエントリーモデルとしてはもちろん、1台のクルマとしても興味深い仕上がりとなっていた。
LBXは「本物を知る人が素の自分に戻って楽しむクルマ」。ドライブフィールは上質でカジュアル。軽快な走り味は気分を若々しくし、いつまでも走り続けていたいという思いに駆られる
レクサスLBX Relaxリアビュー
インパネはすっきりとした造形。最新レクサス共通の“TAZNAコンセプト”の導入で主要コントロールはステアリングスイッチの操作で完了する。各部の作りはレクサスらしく入念。静粛性は全域ハイレベル
クルマとの一体感を高めるため前席の着座ポジションはやや低めの設定。それに合わせてステアリングやペダルの角度も最適に設定されている。室内は適度にタイト。大人4名がくつろげる。Relaxは本革シート標準
レクサスLBX Relaxリアシート
レクサスLBX Cool(FF)/価格:THS 460万円(AWDは26万円高)。Coolは引き締まった印象を強調。Relaxとはアルミ形状が異なり、シートは本革とウルトラスエードのコンビ仕様。室内トリムにもウルトラスエードがあしらわれる。1.5LのHVシステムや足回りはRelaxと共通。走りの印象はオーバーラップ。LBXのリアサスはFFがトーションビーム/AWDはダブルウィッシュボーン式と異なっている
レクサスLBX Cool(FF)インパネ
スタイリングやインテリアの雰囲気は独特。レクサスSUVとの兄弟関係をあまり感じさせない。とはいえ上質感という点ではレクサスそのもの。なかなかデザインコンシャスに仕上がっている。
中でもタイヤが18インチと大きく、踏ん張っていて素直にカッコイイ。デザイナーはタイヤを思いっきり強調して全体のパッケージを考えるとともに、低重心を強調した“鏡餅”プロポーションを追求したという。ここまで安定したフォルムはちょっと心当たりがない。
開発においては、従来の手法や制約にとらわれず、エンジニアリングからの見直し、プラットフォームの大改良とプレス技術の限界に挑戦した。その甲斐あって、ダイナミックでエモーショナルなデザインが実現できたのだ。ボディサイズは4190×1825×1545mmと使い勝手に優れる。
インテリアは質感が高く、デザインも凝っている。当初100台限定で展開したLBX専用の“Bespoke Build(550万~576万円)”は別格だが、通常仕様でも“Cool”と“Relax”という2つの個性が同価格(460万~486万円)で選べ、内外装のカラーコーディネートをはじめ、ホイールやシートなどが差別化されている。
車内は適度にタイト。前席は乗用車的なポジションとしつつ、後席は狭いと感じさせないようにアップライトぎみに設定されている。後席は身長175cmの筆者が座っても頭上とひざ前に余裕が残る。ラゲッジスペースはサイズのわりに広い。
目指したのは、いつまでも走っていたくなるクルマ
1.5LHVはパワフルで静粛、燃費も優秀
走りはプレミアムカジュアルを掲げる小さな高級車としてふさわしく味付けされていた。いつまでも走っていたくなる楽しさを追求したという。開発にあたって重視したのは、人の感性に寄り添うこと、レクサスのDNAでもある静粛性と乗り心地、そして電動化技術だ。
まずドライバーとクルマとの一体感を高めるドライビングポジションにこだわり、ヒップポイントを低めにし、ステアリングホイールとフットペダルの位置や角度を最適化。操作性の向上を図った。そのうえで基本性能を徹底的に磨き上げ、音や振動などの不要な雑味をなくし、音の発生源を抑えるための源流対策に取り組んでいる。
電動化技術に磨きをかけ、燃費一辺倒のハイブリッドではなく、走る楽しさを感じられる専用のハイブリッドを開発したのもポイント。とくに意識したのが、レスポンスとリニアリティだという。
高効率な1.5L直列3気筒エンジンには、バランスシャフトを組み込み振動対策を施したほか、モーターとバッテリーの出力向上により、100kWのシステム最高出力と、ダントツのWLTCモード燃費27.7km/hを達成した。
レクサス初の組み合わせとなるパワートレーンの完成度は実に高い。ごく普通に乗っているときには、性能的に近い関係にある身内と比べても、なかなかエンジンがかからない印象を受けた。それでいて強めの加速を求めたときには、高出力モーターと高い電気出力を誇るバイポーラ型ニッケル水素電池が効いて、瞬発力のある気持ちのいい加速を示す。
音や振動についても、エンジンのバランスシャフトやマークレビンソン装着車ではアクティブノイズコントロールも効いて、ほとんど気にならない。3気筒としてはよく抑えられていた。
レクサス初めての人にも愛用者にも
新たなプレミアムモデルの提案
フットワークも素晴らしい。サイズのわりに大きなタイヤを履くので、シャシーのチューニングには苦労したそうだが、小さな高級車ぶりは見事なもの。絶妙な設定の電動パワーステアリングも手伝って、切り始めから正確に応答し、無駄な挙動が出にくい。そのうえ操舵感はスッキリとしている。
乗り心地は2WDとE-Fourではリアサス形式が異なり、軸重にも80㎏の違いがあるが、差が出ないように配慮されている。また、前席と後席で乗り味の違いが少ない点も評価ポイント。どの席でも快適なクルージングが楽しめる。
念のためお伝えすると、LBXのTNGAプラットフォームは、GA-Bをベースにしている。構成としてはヤリスクロスとの共通性が高いが、あらゆる部分にレクサス専用開発が施され、両車を比較して「違いが……」というのはまったく適切でないほど、別物に仕上がっている。
LBXは、これから初めてレクサスに乗ろうというユーザーはもちろん、レクサス愛用者のセカンドカーやダウンサイズとして、幅広い層に受け入れられるに違いない。新たなプレミアムモデルの提案である。
(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一郎 写真/山上博也)
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