「くそクレームに毅然対応」の飲食店が今度は「日本では日本語を喋る努力をしろ」と投稿 店主が「外国人一律拒否ではない」と真意を明かす
「Japanese language only(日本語対応のみ)」の張り紙を店頭に掲出した経緯を明かす
コロナ禍の終息、円安の後押しもあり、GWの観光地は多くの外国人客で賑わいを見せた。インバウンド需要回復を歓迎する声もあるが、一方で、急増する外国人客への対応に苦慮する飲食店も少なくない。
【写真】「現金払いのみとなります」など…店頭には他にも様々な張り紙が。箸袋に書かれた客からのクレームも
〈白人のカップルが入店してきたから「日本語がわからないと対応できない」と伝えたらポカンとして「no english menu?」と英語で聞いてきたから「ない」と日本語で答えてやった。ここは日本だ。俺も英語の国に行ったら英語を喋る。日本では日本語を喋る努力をしろ。無理なら通訳を連れてこい〉(原文ママ)
4月20日のX(旧ツイッター)でそう呟いたのは、東京・向島の大衆酒場「かどや」の40代店主「黒かどや」さん(@kadoya1)。投稿は話題を呼び、5月上旬時点で1800万件超の閲覧数を記録している。
過去にもXへの投稿で〈クソクレームには毅然とした態度で立ち向かう〉〈客に怒鳴られたら怒鳴り返す〉〈安い客を「様」で呼称しない〉など、歯に衣着せぬ物言いで物議をかもしてきた黒かどやさんに、今回の投稿の真意を聞いた。
「投稿への批判もありましたが、『よく言ってくれた』という賛同の声を手紙やDMで多数頂いています。ルールやマナーを守らず“我が物顔”に振る舞う外国人客が増えている、と感じる人が少なくないということでしょう。一部かもしれませんが『商売をしているなら英語対応ぐらいできて当たり前』と言わんばかりに、終始、英語で通そうとする外国人客がいるのも事実。片言でもいいから現地の言葉で会話を試みる、といった気遣いに欠けている人が多いのでは」
懇切丁寧に対応する余裕がない
現在「かどや」では、「Japanese language only(日本語対応のみ)」の張り紙を店頭に掲出し、対応しているという。
「誤解されると困るのですが、うちの店は『外国人一律拒否』ではありません。日本語で意思疎通ができる外国人の方もたくさん来ます。ただ、うちは注文を紙に書いてもらうシステムなので、言葉や文字がまったくわからない人がオーダーするのは困難。だから『日本語対応のみ』の張り紙をしました。『Japanese only』だと差別になってしまうし、それは不本意。無用なトラブルを避けるための苦肉の策なんです」
そう話す黒かどやさんだが、英語がまったく話せないわけではない。
「留学や料理人の仕事で、計3年ほど欧州で生活していました。英語である程度のコミュニケーションは可能ですが、咄嗟に『ニラ玉炒め』や『フグのにこごり』がどんな料理か? と言われても説明するのは難しい。翻訳アプリを使っても限界があるし、そもそも言葉がわからないお客に、懇切丁寧に対応している余裕がないんです」
2004年の開店後、しばらくは言葉のわからない外国人客も受け入れてきたというが……。
「対応をやめた理由の一つは、総じて客単価が低かったからです。うちの店に限っては、外国人客の単価は日本人客の半分から3割程度。しかも長居されることが多かった。店がある向島は下町で格安の民泊も多数あり、『なるべく飲食にもお金をかけたくない』層が多かったのかもしれません。でも、そのようにコミュニケーションも取れず、お金を使ってくれない人を受け入れると商売が成り立たなくなってしまうんですよ」
常連の足が遠のいてしまう危惧
同様の悩みは、羽田空港のある大田区の繁華街でも聞かれた。夫婦で店を切り盛りする居酒屋店主(60代)の話。
「今のところ大きなトラブルはありませんが、会計時に“お通し代”の説明を求められたり、クレジットカードが使えないことに腹を立て、英語で捲し立てられたことがありました。観光地の飲食店などと違い、地元のお客さんで成り立ってきたうちのような店では、対応にも限界があります」
海外からの“一見客”を受け入れることで、「常連さんの足が遠のいてしまう危惧もある」と言う。
「開店直後にグループで来店し、ろくに注文をせず、閉店まで居座る外国人客も少なくありません。キャパも少ないから、常連さんがいらしてもお断わりせざるを得ないことも。慣れない日本酒を次々に空けてどんちゃん騒ぎし、店内で嘔吐されたこともありました。日本人でもマナーの悪いお客さんはいますが、言葉が通じない外国人客の対応は本当に難しい」
前出のかどや店主が言う。
「飲食店を構えていれば、いろんなお客が来店します。でも、日本政府が進めた『おもてなし』政策を是として、理不尽な外国人客に迎合する必要はないと考えます。当店の『日本語オンリー』に腹を立てた外国人客から、差別用語を含んだ嫌味を言われたこともありましたが、私は『英語対応をしない』と決めているので、言い返さず睨みつけるだけにとどめました(笑)」
「インバウンド好景気」を手放しで喜ぶべきか。